今回は少しリアルセキュリティよりの認証関連ネタということで、玄関などの鍵のお話です。
先日、玄関ドアなどに取り付ける「スマートロックシステム」のメーカーLockState社が提供している500台以上のスマートロックが、ファームウェアのアップデートトラブルにより、操作できない状況に陥り大問題になっているというニュースが飛び込んできました。
設置済みのロック内のシステムをネットを通してアップデートした際に、各ロックがサーバに再接続できない状況になってしまい、リモートでファームウェアの修正をすることができなくなってしまったようです。
解決方法はドアからロックを外し、同社が提供するロックと交換するしかないようで、交換が行われるまでの1週間以上ドアのロックがない状況となり、スマートロックシステムの弱点を露呈してしまいました。
本来スマートロックというのは物理的な鍵を使わないで施錠・解錠ができるロックシステムで、出回った当初は「暗証番号入力方式」のものが広まっていきました。
その後、ネットワークや認証技術の進歩を受けて様々な方式のスマートロックが登場してきました。
暗証番号式から指紋認証方式へ、さらにはスマホを使って施錠解錠するタイプが2015年頃より急速に登場してきて、今日では、鍵を使わないロックシステム全般のことではなく、その中のスマホを使ったシステムのことを「スマートロックシステム」と呼ぶようになってきているようです。
このスマホ利用タイプでは、スマホにインストールした専用アプリを起動してドアの近くでアプリでのロック操作を行うタイプと、スマホをかざすだけでアプリ操作も不要なタイプの2種類が登場しています。
では従来の物理鍵と比べた場合のスマートロックのメリットやデメリットはどうなんでしょう?
スマホが必要な電子認証タイプのロックの場合で見てみましょう。
- <スマートロックのメリット>
- 鍵を遠隔で自由に作り直せる(鍵番号や認証コードを替えれる)
- 鍵の紛失の恐れがない
- 鍵の閉め忘れの恐れがない(オートロック対応のシステムの場合)
- 合鍵を作って他人に渡せる(期間限定可能。実際に会って鍵を渡す必要がない)
- 鍵が偽造される恐れがない
- 開錠が楽(スマホをかざすだけのタイプの場合)
- 鍵穴がないのでピッキングされない
こんな感じですね。こうやって並べていくと素晴らしいものにしか思えないですが、実際には以下のようなデメリットもあります。
- <スマートロックのデメリット>
- 電池切れのリスクがある(電池が完全に切れると鍵の施錠・開錠ができなくなる)
- スマホユーザーでないと使えない
- スマホを紛失したり持ち忘れたりすると作動できない
- スマホが故障・電池切れだと作動できない
- 開錠が面倒(スマホアプリを起動して開錠するタイプ)
- コストが高い。取り付けが手間・費用がかかる。(借家だと付けれないタイプもある)
さてスマートロックのメリットとデメリットを挙げてみましたが、いかがですか?
実際、スマートロックの存在は知っていても、自宅の玄関をスマートロックにした方はまだあまり多くないと思います。
特定の家族だけしか出入りしない一般家庭の場合には、スマートロックにするメリットの恩恵がさほど大きくはないからです。
その一方、オフィスなどではスマートロックになっている場合が一般家庭より多いと思います。
ではどういうケースがスマートロックに向いているでしょうか。
その考察が以下の表です。
鍵の使用者 | ケース | 適した鍵のタイプ |
---|---|---|
限定ユーザー(少人数) | 一般家庭、個人商店中小企業事務所など | 従来ロック(物理鍵) |
限定ユーザー(多人数) | 大企業等 | スマートロック(ICカード式)スマートロック(スマホ認証方式) ※拠点が多い場合など |
非限定ユーザー | 大規模宿泊施設など | スマートロック(ICカード式) |
非限定ユーザー | 小規模宿泊施設など | スマートロック(遠隔設定対応暗唱番号式)スマートロック(スマホ認証方式) |
この表を見ると、スマートロックのメリットを最大に活かせるのが小規模宿泊施設。物理的な鍵やカードの受け渡しが必要ないし、チェックアウトしたらすぐに暗証番号やコードを変えてしまえば、過去の利用者も入れなくなるからです。
最近日本でも登場して話題になってきている「民泊」(古くからあるところだと「貸別荘」)のような宿泊施設こそ、スマートロックには最適、ということです。
実際、貸別荘(アメリカだとVacation Rentalと言います)の玄関ロックは、昔は物理鍵を使っていましたが、現地にオーナーがいたり、管理事務所がある場合であれば何とかなるものの、それでも鍵の受け渡し時間の問題など、不自由なことや面倒が多く、ロックコード式のキーボックス化をしているケースが主流で、徐々に電子式でキーレススマートロック化が進みつつあります。
民泊先進国アメリカでのバケーションレンタル物件の玄関ロックの進化

※現在はまだ真ん中のキーボックス式からスマートロックへの移行段階
現在の主流は、契約後に、オーナーや管理会社からロックの暗証番号をメール等で教えてもらい、それで現地でドアを開錠する方式です。これだと到着時刻が遅くなってしまった場合でも問題がないので、貸す側にも借りる側にも面倒がないのです。
そしてこの暗証番号方式でも、物理的な操作で暗証番号を変えるタイプが多かったのですが、最近では、オーナーが遠隔で暗唱番号を変えることができるタイプへの交換が進んでいます。そうすれば、離れた場所にいるオーナーでも問題なく管理できるので。
またこういう貸別荘では、利用者がチェックアウトしたあとはクリーニング業者が清掃やゴミの片付けなどに入るので、業者の出入り対応の点でもスマートロックの合鍵作成機能が役に立つのです。
他にも、ベビーシッターやペットシッターなどのように、自分が不在時でも自宅に信頼できる第三者を一時的に入れることができるようにするケースもスマートロックならではの合鍵機能が活かせるところですが、まだまだアメリカなどに比べて日本ではそういうサービスを頼むユーザーも多くはないようです。
スマホ連携のスマートロック、現在ではいろいろなタイプの製品が販売されています。中には全く取り付け工事もいらない1秒で取り付けて使えるような製品もあるようです。
また、スマートロックには玄関の鍵以外にも南京錠タイプのような製品もあるので、スマートロックと固定の荷物ボックスを用意しておいて、不在時の宅配便受け取り用ボックスにする使用法もあります。
スマートロック、これから先、もっと面白くなっていくかもしれませんね。
P.S. Androidに搭載されているスマートロック機能というのは、名前は同じでも全く違う意味になります。念のため