あらためて架空世界の認証事例を紹介

……それでは講義を始める。
前回は「総集編」と題し、小テスト形式でこれまでの講義をおさらいした。成績はいかがだっただろうか。心配なところがあるようだったら、もう一度以前の講義を確認しておくと良いだろう。
今回の講義は前回の小テストを受けた前提で行うので、気を抜かないように。

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さて、今回取り上げるのは「勇者王ガオガイガー」。
色々切り口のある作品ではあるが、今回は前回の小テストの問題とした「そもそも認証とは何か?」という点をもうちょっと深く掘り下げていくつもりだ。そのつもりで読んでほしい。

「あとは勇気で補えばいいッ!」

では基本データから紹介しよう。
「勇者王ガオガイガー」は1997年から放送されたSFロボットアニメ。名古屋テレビ・サンライズ制作のいわゆる「勇者シリーズ」の最終作を飾るアニメだ。その後続編のOVA「勇者王ガオガイガーFINAL」が制作されたり、同じ世界設定を持つダークSFアニメ「ベターマンなども制作されたりした人気作品だ。

あらすじを紹介しよう。2003年、宇宙飛行士「獅子王凱」は宇宙空間で謎の機界生命体と衝突。瀕死の重傷を負った凱は、黄金に輝くメカライオン「ギャレオン」に助け出され地球に不時着する。その手には緑色の宝石Gストーンが握られていた。そこから得られた技術によって、凱はサイボーグとして復活する。一方、謎の機界生命体は地球のどこかへ姿を消した。
そして2年後の2005年。機界生命体「ゾンダー」が地球上で活動を開始する。それを阻止するのが「ガッツィー・ジオイド・ガード」、略してGGG(スリージー)。そして凱が操縦する鉄の巨人「勇者王ガオガイガー」だった。
ガオガイガーは、その圧倒的なパワーでゾンダーを破壊、核を壊そうとする。その前に、羽を持った緑の髪の少年が現れる。彼の名前は「天海護」。護の力で核を浄化すると、なんと中から人間が出てきたのだ……!
そして、護はGGGの特別隊員となり、ゾンダーから地球を守るため凱たちや勇者ロボたちと戦っていく……。

スーパーロボットものには珍しい精緻な設定と謎の数々、そしてこれこそがスーパーロボットものという熱い展開が好評を博した作品である。
成功確率がほとんどゼロなのにも関わらず「成功率なんてのは単なる目安だ、あとは勇気で補えばいいッ!」というGGG長官「大河幸太郎」のセリフはあまりにも有名である。

「ファイナルフュージョン、承認!」

さて、本題である。本講義第10回の小テスト、第1問を覚えているだろうか?
「認証とは何か」という問題だったのだが、これの不正解の選択肢を覚えているだろうか?
いや、タイマンを張る方ではない。

【1】認証とは「その製品が一定のクオリティに達している」と公的機関、あるいは政府からお墨付きを得られることである。

これである。
お墨付きを得る行為のことを認証と呼ぶ業界があるという話をしたかと思う。今回、この「お墨付きを得る」行為を「認可」として、「認証」と区別して呼ぶことにする。
この「認可」の場面が、ガオガイガーでは度々登場するのだ。

ガオガイガーは凱とギャレオンが合体した「ガイガー」と、ガオーマシンと呼ばれるロボットと合体する「ファイナルフュージョン」を行うことで登場する。ただ、初期はこの「ファイナルフュージョン」の成功確率が大変低く、とてもではないが実行に移せる状態ではなかったのだ。
しかし、ここで大河長官の名セリフ「あとは勇気で補えばいいッ!」が登場する。ついに地球にゾンダーが襲い来る火急の時。ここでガオガイガーが出て行かなくては地球が滅亡してしまう。GGG長官の権限で「ファイナルフュージョン承認」、つまり認可を行なったのだ。

ちなみにファイナルフュージョンが承認されたあとに認証は存在するか? と言われると、特に存在しないようだ。
承認の命を受けて、オペレーターの「卯都木命」(ちなみに凱の彼女である)が、プラスティックのカバーに覆われたボタンを、カバーを割りながら押す、それだけでファイナルフュージョンのプログラムはドライブされる仕組みとなっている。
まあ、このボタンを叩き押すところがこの作品の熱いところであるし、あまり細かいところを突っ込むのは野暮というものであろう。

「光になぁれええええええええ!」

GGGには地球を守るための兵器がいくつも存在するが、その中には一歩間違えれば地球を破壊しかねない大変危険なものも存在する。そうした兵器の運用にはさらに厳重な認可と認証がかかっている様子がアニメからも見て取れる。その兵器のひとつが「ゴルディオンハンマー」だ。
対象にハンマーから放出される強烈な重力波を浴びせ、光速以上の速度で「落下」させる。これによりあらゆる対象を光子にまで分解してしまうという、まさに必殺兵器である。

当然のことながら対象を間違えると即座に地球滅亡であるため、これを発動するには大河長官の独断でも行うことはできない。GGGは、日本国が管轄する組織であるため(物語が進むと国連の管轄となる)、内閣総理大臣による承認、つまり認可が必要となるのである。
内閣総理大臣から認可を得ると、大河長官に鍵が渡される。この「所有物認証」により、ゴルディオンハンマーの運用が承認される。
さらに、命が起動用の認証キーカードをスロットに読み込ませ、セキュリティデバイスの解除をしなければいけない念の入れようだ。ここは複数の所有物認証による多段階認証に加え、認可も複数名で行うという、実に最終兵器らしい運用方法となっている。

ちなみにこのゴルディオンハンマーだが、使用するガオガイガーの方も無傷ではいられないという欠点を持っている。
最初に使用した時には大ダメージを受けてしまい、ガオガイガーの運用が難しい事態に至ってしまったため、ゴルディオンハンマーを持つためのサポートシステム「マーグハンド」が開発され、やっと実用に至ったという経歴を持つのだ。

「認可」と「認証」は不可分、諸君も他人事ではない

今回見てきたのは兵器使用の「認可」が先にあり、その後「認証」するというプロセスだったが、通常は「認証」した後で、使用を「認可」するというプロセスを踏むことが多い。これは諸君も経験したことがあるだろう。
TwitterやFacebookなどのSNSにある「ソーシャルログイン」もそのひとつだ。SNSに連携したアプリケーションを、IDやパスワードの登録が不要で使用できるようになる機能である。

仕組みはこうだ。
まずSNSで、諸君がそのアカウントの持ち主かどうかの「認証」を行う。そして、その連携アプリケーションにSNSの機能を使用させてもよいか「認可」するための画面が表示される。ここでOKすれば、そのアプリケーションにSNSの機能(の一部)を使用できるよう「認可」される。
Twitterでよく、スパムアプリケーションにアカウントを乗っ取られ、大量のスパムツイートをしてしまった……のような事例があるが、これはスパムアプリケーションにも利用者自身が「認可」してしまったからに他ならない。

「認可」するアプリケーションが自分の思っているようなものか、信頼できる運営者かどうかは適切に見極めないとならない。
代理認証サービスを運営しているSNS側では、連携アプリケーションの安全性を保証しているとは限らないのだ。これはしっかりと覚えておこう。
これはTwitterだけではなく、FacebookやInstagramなど、どのSNSでも同様だ。このような代理認証サービスを安易に使うと痛い目に遭うので注意するように!

余談:認可のもっと詳しい話

セキュリティ業界的に言えば、認可はもうちょっと違う意味に使われる場合も多い。
なんらかの手段で認証された人/モノが、その行為を行う権限を持っているかどうかを決定するのが認可であり、これは通常機械的に行われることが多い。
さらに、認証を経なくても認可されていることさえ証明できれば、特定の機能を利用できる、などの機能を提供するシステムもあるのだ。

そうした意味で、人間が認可を行うガオガイガーのような仕組みは、より原始的だと言えるだろう。本講義でそこまで立ち入った内容に入ることはないと思うが、セキュリティの専門書を読んでいると細かい定義が問題になることも多いので、一応注意してほしい。

一方、法律業界でも認可という言葉ははっきりと定義されている。
今回のガオガイガーのように、大河長官が内閣総理大臣に要求する行為は、はっきりと認可と言える。
他にも、例えば鉄道の運賃を値上げしたい場合、鉄道会社が主務大臣(ここでは国土交通大臣)に申し出て、それを了承されるのも認可である。

……話がややこしくて理解できなくなってきたかな?
本当は「認証」という言葉にも、セキュリティ業界的な意味と法律業界的な意味で色々ある話をしておきたかったのだが……。
とりあえず前回の問題の不正解【1】の「認証」は、法律業界的な意味から言えば正しい使い方であることは伝えておきたい。
ここではこれくらいにしておこう。この辺り、とかく日本語は難しいことを実感する。

次回は政府側からのハッキング?

今回は「勇者王ガオガイガー」を題材に、認証と認可の違い、そしてそれが不可分であることを見てきた。いかがだっただろうか。
今回登場した内閣総理大臣の認可といえば、他にも映画「シン・ゴジラ」などほかの作品にも登場しているので、興味のある諸君はぜひそうしたシーンを探してみると良いだろう。

今回は政府側機関が地球を守るために認可を行うという内容だったが、次回は政府側機関が治安を守るためにハッキングを行うという、合法かどうかギリギリのネタをお送りしたいと思う。お楽しみに。

それでは今回の講義はここまで!

【著者プロフィール】

朽木 海(フリーライター、編集者)
主にITとゲームのあれこれを請け負うライター。前職は某ゲーム会社でいろんなゲームを作ったり、公式Twitter担当をしたりしていました。現在勉強中のテーマはブロックチェーンとマストドン。そろそろ年末進行に突入しますが、面白そうなゲームもいっぱい発売されるんだよなあ……。ぐぬぬ。

>前回記事:架空世界 認証セキュリティセミナー 第10回「定期考査:架空世界で認証知識テスト」
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