2017年12月に最新作「最後のジェダイ」が公開
……それでは講義を始める。
前回はドラマ「24 -TWENTY FOUR-」を題材に、政府機関によるハッキングについて考察した。政府機関は権力を持つだけに、所属する人間が暴走しがちな人間だと恐ろしいことにもなり得る。現実世界ではそのようなことがないよう祈りたい。
さて、今回題材にあげるのは超有名SF映画大作「スター・ウォーズ」シリーズだ。
地上波テレビでも何度も放送されている本シリーズだが、きちんと通して見たことがない人も多いのではないだろうか。2017年12月には最新作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が公開されたこともあり、この機会に見直してみるのはいかがだろうか。
もちろん、この講義を受けている以上は、認証について気にしながら見るのが重要だ。では、どのあたりをポイントに見ていけば良いか解説していこう。
「遠い昔、遥か彼方の銀河系で……」
まずは基本データから紹介しよう。
1977年に公開された「スター・ウォーズ/新たなる希望」を端緒に、1983年までにオリジナル・トリロジー3部作が公開された劇場映画。「遠い昔、遥か彼方の銀河系で……」(A long time ago in a galaxy far, far away…)という冒頭はあまりにも有名だ。
当初はこのオリジナル・トリロジーで完結する見込みであったが、大ヒットしたためにプリクエル・トリロジーと呼ばれる前日譚、アナキン・スカイウォーカーがダース・ベーダーになるまでのストーリーが描かれ、全6部作となって完結とされた。
その後2012年にウォルト・ディズニーカンパニーがルーカスフィルムを買収。後日譚に当たるシークエル・トリロジーの制作を発表した。
2015年「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、そして2017年「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」が公開され、2019年にはエピソード9となる映画の劇場公開も予定されている。
さらに、2017年11月にはシークエル・トリロジー完結後に新たなる3部作を制作するとウォルト・ディズニーカンパニーから発表があった。
あらすじは、あまりに長いサーガであるから今回は省略する。
大きく分けて、アナキンの成長と暗黒面への堕落を描くプリクエル・トリロジー、ルークが父親を超える姿を描くオリジナル・トリロジー、そして新たな主人公レイがジェダイと関わりあうシークエル・トリロジーという構成となっている。
「フォースと共にあらんことを」
さて、スター・ウォーズといえば、ジェダイの騎士やシスの暗黒卿たちが使う不思議な力「フォース」である。このフォースを用いて認証したり、認証を回避したりすることはできるのだろうか?
本稿を企画している際、編集M氏と「フォースで認証を突破した場面があったような気がする」という話をしたのだが、実際はどうなのだろうか。取り急ぎオリジナル・トリロジーとプリクエル・トリロジーを見返してみたのだが、そうした場面は存在しなかった。
印象だけで決めつけてはいけなかったようだ。
そもそもフォースとはどのような能力なのだろうか。
主に「予知」「認識能力の拡大」「直接触れずに対象を動かす」「身体能力の強化」「他人の心を読み取る」「他人の心を操る」「自分の考えを相手に送る」「癒し」そして「霊体化」などがある。
このうち、知識認証は「他人の心を読み取る」で突破できそうだが、実際はどうだろうか。
残念ながらフォースの力では相手の感情の変化しか読み取れないという制限がある。
そのため、パスワードやパスフレーズなどのような複雑な文言を読み取ることはできないようだ。
実際、ダース・ベーダーがレイア姫にデス・スターの設計図のありかを聞き出そうとしていた時はフォースを用いず、自白剤などを使用していた(それでもレイア姫はありかを言わなかったのだが)。
では「他人の心を操る」能力はどうだろうか。
例えば検問を突破するような場面でストーム・トルーパーに心理操作を仕掛け、「探しているロボットはこれではない」というような思い込みを植え付けることは可能である。
しかし、強い信念を持つ人物に対しては心理操作が効かないため、「コードギアス 反逆のルルーシュ」のギアスのようにパスワードを渡してもらうようなことは不可能なようだ。
そのほか「直接触れずに対象を動かす」は、鍵のかかった扉の裏側にあるボタンを押すようなことは可能かもしれないが、実際にそういう場面はなかった。
ちなみに外伝作品まで含めれば、電子回路を修理もしくは誤動作させるような能力を持つジェダイは存在するようなので、彼らならばあるいは認証を突破することが可能なのかもしれない。
無敵のハッキング能力を持つ「R2-D2」
一方で、認証を突破するのを得意とするのはドロイドのR2-D2である。
元々は惑星ナブーの王室専用機に備え付けられた宇宙船や電子機器の操作を主目的としたドロイドで、高度な電子頭脳を持ち、宇宙船などの操縦、電子、機械修理はもとより、暗号解読からハッキングまでなんでもござれである。
ただし、どこでもハッキングできるわけではなく、通信ソケットを施設のドロイド接続用ポートに接続し、メインコンピューターと接続しなくてはならない。
ここに至るまで戦闘をかいくぐったり、見つかるピンチを脱したりなど、様々な冒険を繰り広げるのだ。
一度繋いでしまえばそこからはR2-D2の独壇場だ。
数秒で地図を取得したり、扉を操作したりできるようになる。さすがにもっともセキュリティの厳重なところを直接操作はできないようだが、味方の人間をサポートし、大活躍を見せる。
敵地の基地にセキュリティが存在しないということはないだろうが、基本的に主人に忠実なドロイドがハッキングを仕掛けるということは想定されていないのだろう。ドロイド接続用ポートからの認証は比較的ゆるく設定されているのかもしれない。
R2-D2と、相棒のプロトコルドロイドC3-POは全てのトリロジーで登場する、影の主人公たちだ。その中でも危険を顧みず主人公をサポートするR2-D2は、スター・ウォーズ・サーガの真の立役者なのかもしれない。
「最後のジェダイ」で登場する「コードブレーカー」とは?
最新作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」では、R2-D2でも破れない暗号を破れるとされる「マスター・コードブレイカー」が登場する。
以下、若干のネタバレを含むのでご注意あれ。
敵となるファーストオーダー率いる大艦隊に急襲される主人公たちレジスタンス。なんとか一撃を加え、スター・デストロイヤーを1隻撃沈することに成功したすきにハイパースペースにジャンプ。
しかしファーストオーダーはレジスタンスの艦隊に追跡装置を仕込んでおり、ハイパースペースを超えて追跡してくる。
劣勢を打開すべく、追跡装置の探知機のあるメガ・スター・デストロイヤーに侵入して電源を一時的にオフにしようと企む。しかしメガ・スター・デストロイヤーの全面を覆っている防衛シールドの管制用コードは、一時間ごとに変更される。
これをハッキングできるのが「マスター・コードブレイカー」。
惑星カントニカのカジノリゾート、カント・バイトにいるとする彼を連れてくることはできるのか、そしてどうやって認証を突破するのか……?
ここから先は劇場で確かめて見て欲しい。あっと驚く結末が諸君らを待ち受けているはずだ。
次回は「犬」に馴染み深いあの監督の作品を
今回は「スター・ウォーズ」シリーズを題材に、レジスタンスの認証の突破について話をしてきた。いかがだっただろうか。
「スター・ウォーズ」シリーズはクロニクル以外にも劇場作品の外伝、さらにゲームや小説、アニメといった多方面の展開がなされている。そこにも認証の話題が登場するかもしれないので、気になる諸君は探してみるとよいかもしれない。
さて、次回。2018年は戌年であることにちなみ、ちょっと強引だが「犬」に馴染み深いあの監督の作品を取り上げてみたいと思う。お楽しみに。
それでは今回の講義はここまで!
【著者プロフィール】
朽木 海(フリーライター、編集者)
主にITとゲームのあれこれを請け負うライター。前職は某ゲーム会社でいろんなゲームを作ったり、公式Twitter担当をしたりしていました。現在勉強中のテーマはブロックチェーンとマストドン。今年もゲームをいっぱい遊ぼうと思っていますよ。
>前回記事:架空世界 認証セキュリティセミナー 第12回「政府機関によるハッキング【24 -TWENTY FOUR-】」
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