スマホのロック解除に生体認証が使われるようになって、それまでは一部の業務用での利用に留まっていた生体認証が一気に私たちの身近になってきました。
さらにスマホのロック解除に指紋認証が先行していたところ、2017年のiPhone Xが顔認証へとシフトしたことを受けて、顔認証に覇権が移っていきそうな状況になってきています。

パスクリ通信でも生体認証は何度も取り上げてきました。
・えっ、体臭まで!?個人認証方法の多種多様化が止まらない!(2017年6月30日号)
・海外旅行に活躍中!生体認証システム「自動化ゲート」(2017年7月21日号)
・顔認証をめぐる動きがアツい!(2017年11月3日号)

これらの記事にもあるように、実に様々な認証方式が研究開発されてきています。
虹彩認証や静脈認証なども高い精度を持ち、実用化されていますが、一般的な知名度では、指紋認証と顔認証が二大生体認証となっている状況です。

そこで今回はこの2種類の生体認証をどちらがいいか、ではなく、使い分けの観点でまとめてみたいと思います。
スマホでのロック解除に絞るとその違いは明確ではないですが、ちゃんとそれぞれの特性を理解すると、別々の用途がある、ということがわかってくるものです。
ちょっとアカデミックっぽいですね・・ p(^_^)q

両者を比較する上で参考になるいい事例があります。それがパスクリ通信でも取りあげてきた「自動化ゲート」です。
成田空港をはじめとして国内の主要4空港に2009年から順次導入をされてきた自動化ゲートは、指紋認証を使った無人での出入国ゲート通過システムです。かなり以前から導入されているにもかかわらず、あまり知られておらず、実は利用者がそんなに伸びていない状況だったようです。
そういう状況の中、2017年秋に羽田空港で新たに顔認証による自動化ゲートのテスト導入がスタートしました。これは2020年の東京オリンピック開催を睨んで、増加する国際線での出入国者に対応するためとのことですが、なぜ自動化ゲートは指紋認証から顔認証にシフトしようとしているのでしょうか。
それは2つの認証方式の違いに大きな理由があります。
それを比べてみましょう。

認証方式 自動化ゲートにおける特徴
指紋認証 事前の指紋情報登録が必要(パスポートには指紋情報がないため)
出国時に登録しておかないと帰国時は自動化ゲートを使えない
パスポートが切り替わるたびに登録のし直しが必要
自動化ゲートで指紋スキャナーに指を接触させなといけない(衛生面での抵抗感)
顔認証 事前の顔登録が不要(パスポートの顔写真情報を使えるため)
帰国時だけでもOK
目の前の鏡を見るだけでいい(接触がないので衛生的)

成田空港などの自動化ゲートでは、登録さえしておけば出国時も帰国時も自動化ゲートを使えるのに、現実には係員のいる有人ゲートには長い行列ができていて、自動化ゲートはガラガラ、でも誰も利用しない、という状況になっています。(登録してない人がほとんどだから)

しかし顔認証による自動化ゲートにすれば、有人ゲートが混んでいたら、誰でも自動化ゲートに行くことができる、これが最大の差なのです。
出入国ゲートの混雑解消のために導入した指紋認証の自動化ゲートが生かされていない現状を打破するのは、事前登録がパスポート作成時にされている顔情報を使った顔認証しかないのです。

こうやって比べると、自動化ゲートの認証方式がシフトしようとしている理由がはっきりしてきます。

他にも指紋認証と顔認証はその特性の違いから使い分けられるケースもでてきます。

たとえば大勢の人がいる場所で、犯罪者などの手配者を見つける群衆監視という技術があります。これは顔認証でなければ成立しません。
一般大衆に顔以外の情報で認証行為をさせることはできないからです。

対して指紋認証の優位性はどこにあるのでしょうか。
指紋認証の最大の特徴は「システム導入のコストが安い」ということにつきます。
また認証機器(リーダー/スキャナー)も小さくていい、という点も大きな強みであり、玄関ドアのロックシステムなど、パーソナルユースに近いところで普及してきたのが指紋認証です。
パーソナルユースに近い利用方法であれば、指を「接触させる」という衛生面の問題も他人があまり触らないものであれば問題はないですし・・・。

スマホに導入された3D情報まで使った顔認証技術の登場により、これから先、顔認証も安価で小型のシステムで実現できるようになってくれば、指紋認証を追撃し、認証のシェアが逆転する可能性も充分にあります。
この先の生体認証の動向、ぜひ注目しておきたいですね。

P.S.
今回は生体認証の代表的な存在ということで指紋認証と顔認証を比べましたが、実は指紋認証と似た特性を持ちながら指紋認証をも凌ぐ導入数を持つ認証方式があります。
それが静脈認証です。
この静脈認証、指紋認証のマイナス点も顔認証のマイナス点をもカバーできる優れた認証方式で、ATMなどで使われているのですが、これはまた別の機会に書きたいと思います。