SF映画の金字塔で認証について学ぶ

……それでは講義を始める。
前回は「プリンセスコネクト!」とその続編「プリンセスコネクト!Re:Dive」を題材に、近未来のウェアラブル端末の脳波認証についてお送りした。いかがだっただろうか。
一見柔らかそうなネタに対して、ゴリゴリのハードな最新技術の話をすると言うのも面白かったのではないかと思う。

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今回はいつもの古典的な認証の話だ。題材は「ターミネーター2」。結構古いSF映画だが、どんな認証シーンが隠されているだろうか。早速見ていこう。

「地獄で会おうぜ、ベイビー」

では基本データから紹介しよう。
前作「ターミネーター」のヒットを受け、ジェームズ・キャメロンが監督し、1991年にロードショー公開された。同年のアカデミー賞で視覚効果賞、メイクアップ賞、音響効果賞、録音賞を受賞している。
その後監督を替えて続編やテレビシリーズも制作されているが、2019年にはキャメロンが脚本、アーノルド・シュワルツネッガーが主演でターミネーター2の直接の続編が制作されると言うのだから楽しみである。

あらすじを紹介しよう。
舞台は1994〜95年のロサンゼルス。10年前のサラ・コナーとロボット「ターミネーター」との死闘を知るものはなく、このままだと1997年8月29日に、30億人の人命が失われる「スカイネット」と人類との核戦争「審判の日」が勃発してしまう。
それを阻止したいサラは、スカイネットを開発するサイバーダイン社の爆破を試みるも未遂に終わり、精神病患者として警察病院へ収監されていた。
一方、カイル・リースとの間に生まれた息子のジョン・コナーは養父母の下に引き取られていた。
「審判の日」に備えるサラによる偏った教育を受けたジョンは、子供ながらにハッキングや武器の知識に精通していた。しかし、母の言動については与太話と断じ、非行に走る日々を送っていた。
ある日、時空を超えて再び2体のターミネーターが送り込まれる。1体は10年前と同モデルのT-800・モデル101型(演:アーノルド・シュワルツネッガー)、もう1体は変形自在の液体金属で構成された最新モデルT-1000型。2体はそれぞれ共通の目標であるジョンを捜索し、ほぼ同時に発見する。襲いかかるT-1000からジョンを救ったのは、かつてサラを襲ったT-800だった……。

実はこの作品、配信サービスで扱っているところは少なく、この原稿執筆段階では、dTV2018年6月30日までの限定配信となっている。気になる諸君は早めの視聴を心がけたい。

「イヌの名前は?」「マックス」「ウルフィーが吠えてるけど、どうかしたのかい?」

では、「認証」について見ていこう。まずは細かいネタを2点紹介したいと思う。
まず、冒頭にジョン・コナーがATMをハッキングし、300ドルをせしめるシーンがある。
ジョンは前述の通りサラにハッキングの技術を習っており、これくらいのことは朝飯前だ、という演出なのだろう。この時はATMに突っ込んでいるデバイスで、PIN(暗証番号)を総当たりしているようだ。
当時のATMのセキュリティがどうなっていたのかは分からないが、現在のATMではこのような単純な総当たりによる突破は不可能になっている。
それよりも暗証番号を聞き出したり盗み見たりして、カードも盗むか偽造して、現金を引き出すほうがずっと楽である。読者諸君は安心してほしい。

続いて、サイバーダイン社の研究所にて保管されている過去のターミネーターのパーツを研究者が見に行く際のシーン。
研究者本人と警備員が同時にボタンを押す、二段階認証が設けられていた。もちろん、警備員が声かけをしているため、お互いの本人確認も行われている。
ちなみに二段階認証と二要素認証は違うというのは第11回の「勇者王ガオガイガー」の記事にも登場している。詳しくはそちらを振り返って見てほしい。

さて、ターミネーター2での認証の大きなネタは、T-1000とT-800の騙し合いにあると言っても過言ではない。
T-1000は液体金属で自由に姿を変えることにより人の目を欺き、例えば警官であると身分を欺いて聞き込みを行ったり、ジョンの義母に化けて家でジョンを待ち受けたりと様々な策略を巡らす。一方、旧型でジョンを守る立場のT-800もそれを見破るための策略を巡らす。
代表的なシーンを紹介しよう。T-1000からの追跡から辛うじて逃れたT-800とジョン。家に帰らなきゃと言うジョンに、T-800は家にはすでにT-1000が待ち伏せしているので危ないと言う。「それでも電話しなくちゃ」と言うジョン。電話してみると、さっき喧嘩したばかりの義母が妙に優しい。T-800にそのことを告げると、T-800はジョンの声色を真似て話し出す。
「妙だな、僕のイヌが吠えてる」と言うジョン。ここでT-800は知識認証を仕掛けるのだ。

T-800「イヌの名前は?」
ジョン「マックス」
T-800(電話に向かって)「ウルフィーが吠えてるけどどうかしたのかい?」

義母が本物なら「ウルフィー? あんたの犬の名前はマックスでしょ」とでも言うはずだ。
しかし、義母からは「大丈夫、なんでもないわ」との返事が。犬の名前の知識がないT-1000が義母に化けているのだ。
これにより義母がT-1000に殺害されていることを知ったT-800は電話を切り、逃走を開始する。

余談:スカイネットは止められないのか?

ターミネーターシリーズで描かれるコンピューター対人間の戦争において、人間側はジョン・コナー率いる反乱軍だが、コンピューター側は「スカイネット」と呼ばれるコンピューターの総体である。
このスカイネットはT-800の残骸から回収したチップを基に開発されたとされる(その後のシリーズでは若干異なる設定のものもある)。つまり、未来からやってきたチップを解析して技術的特異点(シンギュラリティ)を超えるコンピューターを作り出したと言うことなのだ。技術的特異点については第18回の「BEATLESS」の回でも取り上げているので確認してみてもらいたい。
さて、果たして技術的特異点に到達したコンピューターを人間は止めることはできないのか?

同じようなネタはやはりSF映画の名作「マトリックス」シリーズでも見られる。
マトリックスでは最終的に人間側代表のネオとコンピューターが和解する形で結末したが、ジョン・コナーはあくまでスカイネットの破壊にこだわっている。
その方針が正しいのかどうか、筆者は若干疑問である。もしかするとマトリックスでのネオのように、自我を持ったコンピューターと和解する余地はないのだろうか。
あるいはキャメロンが脚本を書く新作ではその辺りが描かれることになるかもしれない。今から楽しみにしておこう。

次回はあの世界的大泥棒の活躍に焦点を当てる

いかがだっただろうか。
かなりテレビでの再放送が繰り返されている本作だが、若い諸君は元ネタを見たことがなかったりするかもしれない。「溶鉱炉に沈んで行く」ネタだけを知っている諸君は、この機会に見てみると良いだろう。
さて次回だが、あの世界的大泥棒「ルパン三世」に焦点を当てて、認証との関わりを見ていこうと思う。最新作「PART 5」はかなり現代のITネタを取り入れているようだが……?
お楽しみに。
それでは本日の講義はここまで!

【著者プロフィール】

朽木 海(フリーライター、編集者)
主にITとゲームのあれこれを請け負うライター。前職は某ゲーム会社でいろんなゲームを作ったり、公式Twitter担当をしたりしていました。現在勉強中のテーマはブロックチェーンとマストドン。アイドルマスターMR ST@GEを見に行きました。まさにそこにアイドルがいましたね。MRの可能性、無限大です。

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