ユーザーインターフェースが大幅に変わった「1Password」のVer.7

マスターパスワードの代わりに、Windows Helloでの認証も可能になった「1Password」の最新版

「パスワード管理アプリ」比較レビューでも紹介した「1Password」の最新版、「1Password version 7」(以下「1Password 7」)がWindows PCとMac用にリリースされました。

イチからプログラムを書き直したと言われる新「1Password 7」、その最も大きな変更点は、ユーザーインターフェースでしょう。
Windows7風のリボンUIから、モダンUIを取り入れた3ペインの洗練されたデザインとなりました。各サイトのパスワード情報なども、ファビコンをアイコンに採用し、カラフルで、一目でわかりやすくなっています。

また、入力が面倒だったマスターパスワードの代わりに、Windows版ではWindows Helloに対応し、顔認証や指紋認証でアプリのロックを解除できるようになりました。

ここでは、この1Password 7の使い方とレビューを、Windows版で紹介します。

【価格体系】
ちょっと複雑な料金体系。スマホユーザーもWindows版で契約するのもひとつの手

Windows版の「1Password 7」の価格体系は、少し複雑です。
「サブスクリプション(購読)」契約といって、月額、あるいは年額で使用料を払う形になります。

Windows版の「1Password」をサブスクリプション契約すると、その契約で、iPhone版やAndroidスマートフォン用の「1Password」も利用できます。
逆にiPhoneやAndroidスマートフォンで1Passwordを利用し、月額でそれぞれのストアに使用料を払っている場合、Windows版も利用できます。
なお、「スタンドアロン」制度というソフト買い切りの契約もありますが、スタンドアロン契約では機種をまたいでの使用ができないので、サブスクリプションのほうがメインとなるでしょう。
Windows版の「個人向け」のライセンスは月額 2.99米ドル、5名まで使用可能な「ファミリー向け」のライセンスは月額 4.99米ドルです。それぞれ年間一括(annual)で支払うと割引があります。

また、ビジネス向けには「Teams」「Business」「Enterprise」版があり、
・Teams:月額 1利用者あたり 月額 3.99米ドル
・Business:月額 1利用者あたり 月額 7.99米ドル
・Enterprise:要見積もり

となっています。機能的にはBusiness以上では5GBまでのオンラインストレージが使える、Enterpriseでは管理者機能としてアイテムの変更履歴が追跡できる、Active Directoryへの対応している、などの違いがあります

上の5ついずれのプランでも、新規アカウント作成した場合、最初の30日間は試用期間として無料で利用が可能です(ただしクレジットカードの登録が必要になります)。

個人利用の場合は「個人向け」を月払いか年間一括で払う形がほとんどになるでしょう。年間一括の方が割引があり、お得です。ちなみに、iPhoneやAndroid版は日本円で400円/月からになっています。

もし、iPhone、Androidスマートフォンを使うことを考えているのであってもWindows・Mac版をサブスクリプション契約してしまった方がいいかもしれません。2018年現在の為替レートだと、その方が安くあがるはずです。

【導入方法】
導入は簡単。ただし、30日の試用にもクレジットカードの登録が必要

1Passwordはサブスクリプション契約をしていれば、Windows・Mac・ iPhone、Androidといった各機種用のアプリを無料で使うことができます。
Windows版のみを使用する場合、インストール方法は、以前のバージョンとほぼ同じです。

Windows版、Mac版とも「1Password」のダウンロードページからアプリをダウンロードできます。
Windows版は「1Password for Windows」、Mac版は「1Password for Mac」の「Download」ボタンをクリックし、ダウンロードしたファイルを実行するとインストーラーが起動します。

また、各Webブラウザで「1Password 7」の機能を使うために、「Download browser extension」からそれぞれWebブラウザ用の拡張機能をダウンロードしましょう。

なお、iPhone版、Android版と異なり、Windows・Macで1Passwordを試用するユーザーの場合、ユーザーの元にクレジットカード番号の登録を指示するメールが届きます。
30日の試用期間を過ぎると自動的にこのクレジットカードから利用料が引き落とされますので、試用のみでやめる場合はサブスクリプション停止を忘れないようにしましょう。

またインストール時の注意点として(これはかなり古いバージョンなのですが)、発売元のAgileBitsによれば、1Password 4を使用していた場合は先に1Password 7のインストールが完了してから、1password 4を削除する必要がある、ということです (先に4を削除してしまうと7にデータが引き継がれません)。
ライセンスなどの都合で6ではなくその前の4を使用していた場合は、ヘルプをよく読んで、注意してインストールを行うようにしてください。

【使用感レビュー】
モダンになり細かいギミックも増えて、使い勝手はかなり向上

「1Password 7」は、これまでの1Passwordとユーザーインターフェースが大きく変わりました。

アイコンデザインは、現代風なフラットな物になりました。
これまでの1PasswordはWindows 7風リボンデザインでしたが、それに比べて新しいデザインは、Windows 10のデスクトップに調和がとれたデザインです。

また、レイアウトもこれまでのリボン+2ペインから、3ペインに変更され、サイト情報の一覧性がよくなりました。
左がカテゴリー、真ん中がサイト名、そして右がサイトの概要と一目でほしい情報を見られるようになったわけです。

便利な機能もいくつか拡充されました。
その中でも筆者が特に便利と感じたのは、「パスワードの拡大表示機能」です。

画面中「AA」と書かれたボタンをクリックすると、画面上に50ポイントほどの大きな文字でパスワードが表示できます。
どの文字が何文字目かも一目でわかるデザインで、パスワードの手入力などを余儀なくされた場合は、非常にありがたい仕掛けです。

文字の拡大だけでなく、表示のズーム(拡大・縮小)もできるようになりました。
Windows 10では設定の「ディスプレイのカスタマイズ」でテキストアプリその他の項目サイズを変更することができますが、この1Password 7ではアプリのみの表示の拡大縮小ができます。
パスワード管理画面はなるだけ人に見られたくないので小さくしたい……というような人にはありがたい機能でしょう。

また、これは1Password 7特有の機能ではありませんが、ChromeやEdgeをブラウザとして使用しているのであれば、それぞれ専用のプラグインを使うことができます。
このプラグインは常にパスワードの入力をしているかどうかを見ていて、これまで登録されていなかったサイトにパスワードが登録された場合や、あるいは登録されているのと違うパスワードを入力した場合に、「このサイトに今入力したパスワードを登録するか」聞いてきてくれるのも便利です。

ログインURLの修正などもかなり簡単になりました。画面右ペインの表示された項目をインラインですばやく変更、フィールドの追加なども可能です。

WatchTower」は、パスワード漏洩の恐れがあるサイトにアクセスすると警告したり、脆弱なパスワード、重複しているパスワードを使用しているサイトを教えてくれたり、登録したパスワードやクレジットカードの期限切れなどを注意してくれます。

顔や指紋だけでパスワード代わりになるWindows Hello

今回の1Password 7バージョンアップにおける最大の目玉は、「Windows Hello」への対応でしょう。
Windows Helloとは、PCに取り付けたカメラや指紋認証デバイスで生体認証を行ってWindowsのロックを解除できるという機能なのですが、1Password 7も、このWindows Helloでロックを解除できるのです。

これまでのバージョンの1Passwordでは「マスターパスワード」を入力する機会が多くありました。が、安全のためにある程度長く複雑なもので、しかも絶対に忘れないという矛盾したキーワードを設定しなければなりませんでした。
それを安全のためとはいえ、たとえば5分以上放置した場合再入力必須などと設定すると、離席ごとにそのたびに長いパスワードを入力しなければならないなど正直、面倒になってきます。

しかし、1Password 7でWindows Helloに対応するようになったことで、マスターパスワードの代わりにカメラに顔を写したり、指一本でセンサーに触れたりするだけで、ロック解除できるようになりました。

これは、「革命的」と言ってもいいくらいラクチン便利です。
筆者はこの楽さには非常に衝撃を受けました。

設定方法、利用方法とも非常に簡単です。

設定にはアプリの「設定」-「セキュリティ」タブから「Windows Helloを使って1Passwordをロック解除」がONになっているのを確認してください。これで、1Password 7の最初の起動にはマスターパスワードが必要ですが、それ以降は1Password 7が終了するか、PCをシャットダウンまたは再起動するまでWindows Helloによるロック解除が使用できます。

なお、Windows PC用のUSB指紋認証デバイスは、はじめからPCについている必要はなく、USB接続のものが安いものだと5000円ほどから販売されています。パスワード管理を楽に、確実にするなら、この生体認証デバイスは絶対と言いたいくらいお勧めです。
今までの苦労がなんだったんだろう、と思うくらい楽になります。

なお、スマートフォン版はまだVer6.xと古いバージョンのままのためデザインはモダンではありませんが、iPhoneの場合はTouch ID、Androidの場合も指紋センサーが搭載されている場合は指紋認証によるロック解除が可能になっています。
スマートフォン版との連携は非常によくできていて、PC版でパスワードを登録すると、瞬時にクラウド上のデータ保管所にその情報が登録され、スマートフォン版にも反映されます。デザイン以外の連携はほぼ完全と言ってよさそうです。

退化してしまった日本語ローカライズ度

ただ、この1Password 7、残念な部分もあります。

1Password 7は「イチから作り直した」とされているほど様々にメニューや画面パーツも変わったのですが、そのせいなのか日本語ローカライズ度合いは、残念ながら後退してしまっています。

メニュー、たとえば「新規アイテムの追加」などある程度正しく日本語化されています。
ただ、このアプリではパスワードだけでなく、クレジットカードや運転免許証の番号など様々な情報を登録できるのですが、そのジャンル分けは「Logins」「Credit Cards」「Identities」というように英語のままです。ですので、使用にはある程度の英単語力(かもしくは辞書をひく作業)が必要です。

また、アプリのヘルプとしても参照される1Passwordのサイトですが、こちらは日本語化が全くされていません。表示は英語のみ、サポートへの問い合わせは英語、スペイン語、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロシア語でのみ可能です。操作上わからないことがあったり、FAQを一通り読んでおこうと思うと、残念ながら英語力が必要になってきます。

ただし。それさえ乗り越えられれば、基本はなかなかよくできたアプリです。
特にWindows Helloの生体認証との組み合わせは、これまでのパスワード管理アプリの面倒くささを一気にかき消してくれる便利さです。Windows PCでパスワード管理アプリに悩んでいる場合は、ぜひ選択肢のひとつに入れて検討してみてください。

【著者プロフィール】

大和哲(IT&サイエンスライター)
テクノロジー&サイエンス。技術と科学。
技術は人を便利にする、科学はそのバックボーン。
それを知ることで人生はもっと豊かになれる。そう信じて、日々、PC・携帯電話・スマートフォン・VRを中心に用語やテクノロジー解説、Q&Aなどの執筆を手がけています。代表作は「ケータイWatch」の「ケータイ用語の基礎知識」。1986年のPC誌「Oh!MZ」以来、PC誌、Webニュースサイトを中心に様々な媒体で書かせていただいております。

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