絶叫マシンで有名な富士急ハイランド(山梨県富士吉田市)は、2018年7月14日より入園を無料化し、それに併せて入園管理に顔認証システムを導入しました。
導入したシステムはパナソニック製。テーマパークでの顔認証といえば、以前のパスクリ通信「東京ディズニーリゾート、顔認証を一部導入へ!」でも記事にしたように、ユニバーサルスタジオジャパンでは顔認証システムをすでに導入していますし(年間パスポートユーザー限定ではありますが)、東京ディズニーリゾートでも、2019〜2020年に導入される予定です。
ところが、富士急ハイランドの顔認証システムは、これらのテーマパークとは導入意図が違います。
まず最大の違いは、富士急ハイランドでは「未就学児を除くすべての入園者が顔認証システムの対象となる」ということと、「顔認証システムが個人情報を持たない(一部会員は除いて)」という点です。

一般的に顔認証システムを導入する場合、これは「その顔情報は誰のものか」、つまり、顔情報と氏名などの情報をリンクさせて「顔から個人を特定するもの」となります。しかし富士急ハイランドの場合は「その顔情報が誰のものか」という情報は持たないのです。

顔認証システムの導入にあたって、富士急ハイランド側は「顔認証管理規定」に以下のように書いています。

1.導入の背景
富士急グループ(株式会社富士急ハイランド、富士急行株式会社及び富士急グループ各社)は、顔認証システムを導入し、次の事項の実現を目指します。
(1) 入園時に一人一人の顔を記録することで、世界一安全で安心な遊園地を目指す。
(2) アトラクション利用時の、利便性向上を図る。2.利用目的
顔認証システムの利用目的は、次の通りです。
(1) お客様のチケット保持の確認
(2) お客様へのサービス・商品向上の為の集計等の統計資料
(3) お客様のご意見、ご要望、お問合せに対するご返答を差し上げる場合
(4) その他、富士急グループが提供させていただくサービスにおいて、お客様を特定する必要がある場合

7月14日から初期導入された顔認証システムでは、顔情報と連携する情報は、その顔の人が持っているチケットの種類だけです。
入場や退場の記録も持ちますが、オンラインで会員登録してE-チケットを事前に購入した人を除き、現地で直接チケットを窓口で購入(入園券だけの場合は無料でチケット発行)した人の顔認証データについては、その顔が誰なのかに関する情報は全く持っていないのです。

同園では、顔認証システムを入退場時に限らず、全てのアトラクションの入口に設置しています。そのため、入園したゲストが紙のチケットを提示することなく、顔パスでアトラクションに乗れるので、その点で「利便性向上」は期待できそうです。

ただし、個人情報を持たない、顔写真とチケット種別だけの情報が「”世界一安全で安心な遊園地”を目指すべく、ディープラーニング顔認証技術を活用した入退場システムを導入いたします。」という点に関して、具体的にどういう点で意味を持っているのか、現時点ではクエスチョンマークです。

入場と退場の記録を照合して、園内に不正に居残るゲストがいないかどうか、は管理できますが、それが誰かはわかりません。
園内でトラブルを起こしたりした人を顔写真と照合して、たとえば以降の出入りを禁止するような対応は可能かもしれませんが、その人が誰か、は情報がないのです。
顔写真を撮影されることで心理的な犯罪抑止効果は少しはあるかもしれませんが。

同園の顔認証システムの利用目的には、「お客様のご意見、ご要望、お問合せに対するご返答を差し上げる場合」とか「その他、富士急グループが提供させていただくサービスにおいて、お客様を特定する必要がある場合」ということが書かれていますが、個人情報を持たないただの顔写真情報だけでは、こういう目的は果たせません。

入園無料という画期的な改革を断行したことによる、ゲストの増加や出入りの活発化に対応するための対策の一環としての顔認証システム導入だとは思いますが、同園の目指す顔認証システムがこれからどう進化していくのか、今後の展開を見守りたいと思います。

<参考>富士急ハイランドサイト 顔認証入園ページ