このところ各所で導入が進んでいる生体認証ですが、少しだけショックなニュースが飛び込んできました。
生体認証の中でも顔認証や指紋認証のように、表面に生体情報が現れていないことで偽造が難しく、安全性が高い、という点で銀行ATMをはじめとして利用が広まってきている静脈認証ですが、国立情報学研究所の研究グループが、市販のデジカメで撮影した指の画像を特殊な加工をすることで静脈パターンを復元できることを確認した、という発表がありました。

指の静脈認証「なりすまし」リスク 一人ひとり違うのに(朝日新聞デジタル2018/11/16)

実験では、研究グループが復元作成した静脈パターンを市販の静脈認証センサーに読み取らせたところ、半分以上の指で本人認証ができたということです。

ただし、この方法では、指の撮影時の状況や、個人差(復元しやすい人やしにくい人)などの条件が揃っていて、さらに特殊な画像加工をしたうえで、一部の静脈認証センサーでないと突破できないので、一般人の静脈認証の利用においては過度に心配する必要はない、と言えるでしょう。

しかし、以前にスナップ写真に写った指から指紋を復元して、指紋認証を突破したというニュースがあったように、撮影機器の進化によって、静脈パターンも復元できてしまう時代が来るかもしれないということでもあります。
先週ご紹介したヤフーによる「パスワードレス生体認証」という動きがある一方、生体認証にも偽造リスクがあることを示す、こういった研究の発表は、生体認証だけに依存することへの警鐘にもなっていくことと思います。

P.S.
市販デジカメ撮影画像を使っての静脈認証偽造に成功した同研究所は、同時にこの方法での撮影画像からの静脈偽造を妨害するための特殊なシールを開発したとのことです。

写真からの指静脈パターン復元を防止する手法を提案~コンピュータセキュリティシンポジウム 2018 優秀論文賞を受賞~(国立情報学研究所ニュースリリース2018/11/6)

このシールを指に貼ると、撮影された写真からの指静脈パターンの復元を防止しつつ、シールを貼ったままでもATMなどでの静脈認証は可能。そして、シールは簡単に脱着可能、ということですが、一般人にとっては日常生活で静脈認証をする機会は非常に少なく、偽造防止のためにずっとシールを貼っておく、というのも相当煩わしいですし、一般レベルで実用的なものとは思えません。残念ですが・・・。