声紋認証をコールセンターで
2019年5月、JCBが音声認識を利用した声紋認証システムを用いて本人認証を行う電話サービスの検証実験を開始しました。
米国のニュアンス・コミュニケーションズ社が提供する声紋認証システム「VocalPassword」を用いたもので、コールセンターでのお客様からの問い合わせ時の本人確認を声紋で行う、というものです。
現在はお問い合わせがあると、最初にお客様確認のためにクレジットカード番号や生年月日、住所などを聞き出して本人確認を行なっていますが、この声紋認証システムでは、特別な認証のための作業をすることなく、電話でのやり取り(会話)だけで本人確認をすることができるので、お客様のストレスを大幅に軽減できるとともに、コールセンターのオペレーションの負担も削減できます。
他の生体認証の場合は、生体情報を読み取る機器がユーザー側に備わっている必要がありますが、声紋認証の場合は、一般の電話での通話ができれば認証できる、という点で、特別な端末を必要とせず、またインターネットなどがない状況でも認証が行えるというアドバンテージがあります。PCでの場合でも特別な装置なしでマイクがあれば大丈夫ですし。
声紋認証とは?
「声紋」とは、声の紋様という意味で、音声を周波数分析装置にかけ,周波数と時間の二軸で、音声波形のスペクトルの強度変化をグラフにしたものです。すでに1960年代から犯罪捜査では声紋鑑定が導入され、裁判の証拠としても採用されるに至っている生体の特徴です。
声紋認証では、声道の長さや太さ、口の大きさなど身体的な特徴と、発音・アクセント、発話スピードなど話し方に係る特徴から、数百の特徴点を抽出し、それを個人ごとにパターン化したしたものが認証に使われます。
認証精度は99%程度ということで、まだ精度を高めていく余地がありますが、使用ケースによっては十分に実用レベルでもあり、実際、昨年から様々な製品が登場してきたAIスピーカーも、声紋認証により話しかけている人を登録した人と照合して認証することで、複数のユーザーの使い分けができるようになっています。
一方で「声真似」で認証を突破できたという報告や、双子の区別がつかなかった、という報告も挙がってきているようです。突破する側の技術も向上していくことも考慮すると、使用場所を限定することや、他の認証方式と組み合わせることを考慮すべきでしょう。
他の生体認証ではできないこと
音声認識の可能性として期待できることとして、個人を特定する認証を行うと同時に、声の状態をAIが判断して、例えば本人が脅されて話している場合など、本人の体調や心理状態が通常ではないと推測できるようになっていくであろう、ということです。
この点が音声認識らではの可能性で、電話してきた相手との会話で、声紋認証を行いつつ、本人の置かれた状況などを推測できるように進化していけば、非常に面白い技術になっていくのではないでしょうか。