「PayPay」をはじめとした各社のキャッシュバックキャンペーンで一躍話題となり、2018年から2019年にかけて普及が進んだスマホ決済は、クレジットカードや電子マネーのようなカードベースでのキャッシュレス決済とは違い、スマホ所有率が上がった時代にマッチした決済方法であり、利用者が増えてきました。

このような状況の中、大手クレジットカード会社のUCカードが日立製作所と組んで、2019年12月に、指静脈認証によるカードもスマホもいらない「手ぶら」でのキャッシュレス決済の開発と導入計画を発表し、2020年3月末に実証実験を終了しました。
UCカード/日立製作所プレスリリース(PDFファイル)

今回の実験ではUCカードと日立の社員約650名を対象に、クレジットカードと紐付けした指静脈情報を登録し、数店舗のUCカード加盟店での決済実験を約3ヶ月間実施し、約2,000件の決済回数で、総額約120万円の決済が行われたということです。

店舗におけるキャッシュレス決済イメージ(プレスリリースより転載)


手ぶらキャッシュレス決済の可能性
指静脈認証による手ぶらキャッシュレス決済は、クレジットカードやスマホなどの所有物を使った認証と決済ではないため、PINコードの入力や署名、スマホの操作などの手間がなく、スピーディーな決済が可能です。また、クレジットカードやスマホを持ち歩く必要がなく、紛失や盗難、持ち忘れなどで決済ができなくなる恐れもありません。さらに、生体認証の中でも表面に生体情報が露出していない静脈認証を使うので、生体情報の偽造リスクが低く、なりすましによる不正決済のリスクも大幅に低くなる点もメリットとして挙げられます。高齢化社会においては、スマホをうまく使えないお年寄りの方でもストレスなく決済できると言うのもメリットになるでしょう。
昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、指を使った認証の場合、スキャナーへの接触が気になるところですが、プレスリリースの写真を見る限り、日立ソリューションズ製の「静紋」を使用するようです。こちらは非接触型なので、注意して使用すれば感染リスクは最小限と言えるでしょう。

手ぶらキャッシュレス決済の課題
このように多くのメリットがある手ぶらキャッシュレス決済ですが、課題もあります。
ひとつはクレジットカードと紐付けした指静脈情報の登録方法です。登録するための生体情報スキャナーをどこに設置して、どのように手続きしてもらうのか、これがまず大きな課題となります。
銀行のように店舗がある業態では、店舗の窓口での生体情報登録も可能ですが、クレジットカード決済サービス会社は店舗を持たないので、加盟店に登録機能を持たせるか、登録用の施設を新規開設するなど、なんらかの施策が必要となります。
2つ目は、加盟店への指静脈情報スキャナーの設置です。スマホ決済の場合はQRコードを印刷したものを提示しておけばOKで、それほど設備投資は必要ありませんが、専用の指静脈情報スキャナーとタブレット端末を加盟店に設置するとなると、それなりの設備投資が必要となります。

上記に挙げた課題はいずれもコスト面の課題です。手ぶらキャッシュレス決済は安全面と手軽さの面ではクリアしていると言えますが、コスト面の課題をいかに解決するのかが、普及へのカギとなるのではないでしょうか。今後の状況を見守りましょう。