<本を読むのは成長のため>

みなさんこんにちは。

パスロジ社の総務で働く“あき”です。

突然ですが、この記事をご覧になっているあなたは、本を買うときどんな理由で買いますか?

書名に惹かれて?

本屋で手にとっておもしろそうだから?

今、なにかの分野の知識を身に付けたいから?

検索した本のAmazonや楽天のレビューが高評価だから?

読んでいるときの、何か膜に包まれたような心地良さを味わうため?

それともただの暇つぶしのため?

 

それでは、買った本を読むときはどんな気持ちでしょう?

わくわく?

どきどき?

ゾクゾク?

ふむふむ?

 

読み終えたときはどうでしょうか?

少しでも自分が興味を持った本なら、読み終えたとき、読む前の自分とちょっと違うことに気が付きます。

例えば読んだ本が時事問題系なら、テレビや新聞の言葉がふと気になるようになったとか。

歴史物なら、その時代の情景を思い浮かべるようになったとか。

仕事に関係する本なら、昨日までわからなかった上司や同僚の話がわかるようになったとか。

そう、本は人を変えるのです。それは多くの場合成長です。

そして成長することは嬉しいことです。喜ばしいことなんです!

<書籍購入補助手当制度の導入>

私が勤務するパスロジ社では、従業員にこの嬉しさを、成長の喜びを感じてもらうために、新たな制度を設けました。

それが、今回ご紹介する書籍購入補助手当の制度です。

実は、正確には、今回の制度は新設ではなく、ちょっと形を変えての復活です。

2018年4月まで、同じ名前の「書籍購入補助手当」という制度があったのですが、「せぐな手当」という制度を創設したために内容が一部重複するものとして、それまでの書籍購入補助手当は廃止されました。

それがこの度、復活することとなったのです。

<きっかけは技術者の声>

復活のきっかけは、一人の従業員(30代男性、技術者)からの、本を気楽に買えるようにしてほしいという次のような声でした。

―― 現在、社内で書籍を購入する場合、物品購入申請をしてからの購入が可能だと思いますが、どの程度の必要性を持って購入可能なのかが分からないことと、ワークフローがあるため気軽に申請できないこともあり、社内での書籍購入をためらってしまいます。

気になっている技術や流行りそうなもの、面白そうな内容など、業務とは直接関係なくても、ある程度気軽に本が買えると嬉しいです。

以前あった書籍購入補助の制度は良かったのですが、そうでなくてもそれに近い制度があるとありがたいです。 ――

当社では、1,000円以上のものを購入する際には、物品購入申請書という書類を、社内システムのグループウエア上のワークフローで提出し、上司や社長の承認を得る必要があり、書籍もこの対象となっています。

いくら紙ではなく自席のPCから操作できるとはいえ、申請する行為自体が、本を買うことに対する壁を作ってしまっていたのです。

当社はソフトウエアの開発と販売を行う会社です。人の知識と知恵で製品を作り出し、人が販売をしている「人が命」の会社です。設備らしい設備は、会社のオフィスと、各自のPCやサーバー、周辺機器ぐらいしかありません。もちろんPCなども使う本人の要望に合うものを購入するなど、基本的に惜しまずお金をかけていますが、重要な投資先はやはり設備よりも人です。

今後会社を発展させるために新規事業を発足させるにしても、これまで社内にある知見だけでなく、新たな発想が必要になります。

本を読むことで、会社の業務と直接関係なくても、従業員が知識の幅を広げ、自由な発想を持つことができるようになるのであれば、そうした制度を作らないわけにはいきません。

というわけで、さきほどの声に応える形で「書籍購入補助手当」が復活することになったのです。復活は必然だったんですね。

<電子書籍も、サブスクもOK!>

書籍購入補助手当の対象は、自己啓発のための書籍です。

次の書籍購入補助手当規程第1条第1項にあるとおり、「従業員の自己投資を支援」し、「私的な書籍」の購入費用を補助するためのものです。

―― 書籍購入補助手当規程 第1条第1項(前提)

従業員の自己投資を支援することを目的とし、私的な書籍の購入費用に対する補助手当を設ける。 ――

なお、業務に直接関係する本は、これまで通り物品購入申請を行い、承認を得て、会社の経費で購入します。

書籍購入補助手当の対象となる書籍は、古本でもよく、そうした紙の本に限らず電子書籍もOKです。さらに、読み放題のサブスクリプションサービスも対象となっています。

<手当の金額>

手当の具体的な金額はというと、まずは1,000円までは全額が補助されます。1,000円を超える場合には半額補助となり、手当の上限は4,000円です。これが月単位で給料と一緒に支払われます。

規程では、次のようになっています。

―― 書籍購入補助手当規程 第3条(支給限度額)

1か月あたり4,000円(購入金額7,000円)を上限とし、1,000円までは購入費用の全額、1,000円を超える部分については半額を手当として支払う。 ――

従業員にとっては、7,000円分の購入まで、なんらかの補助が出る形になります。

例えば3,500円分の本を買ったら、1,000+2,500÷2=2,250円会社が払ってくれるのです。

制度をぎりぎりまで使うのであれば、7,000円分の本を買えば、1,000+6,000÷2=4,000円の手当が出ます。

1,000円を超える部分の半額補助については、逆にいえば「半額を自腹を切ってでも欲しい本」が買われることになるわけです。

こうした金額的な制限は、会社の経費を湯水の如く使ってしまうことを避けるためではなく、制度を形だけのものになってしまうのを防ぎ、意味のあるものであり続けるようにするために必要なのです。

<書評>

さらに、制限ではありませんが、この制度を利用するためには、書評を書くという条件があります。書評というと堅苦しいですが、読書感想文ですね。

方法は、このせぐな別館に記事を載せる、ことによります。個々人の希望により、社外に公開したり一部を除き社員向けにとどめたりすることを選択できるので、すべての書評が社外のみなさんの目に触れるかどうかはいまのところ未定です。

ですが、この条件が加わることでも、「書評を書く手間をかけてでも」読みたい本が買われることになります。

もちろん、書評を書くことは、制約条件としてのみ存在するわけではありません。本人がその本から何を学んだのかを明確にすることができます。また、他の従業員へのその本の紹介にもなります。書評により、本を通した従業員同士の交流が生まれるかもしれません。なお、別の従業員が書評を通して同じ本に興味を持ってその本を買った場合も同じように手当が支給されます。

ちなみに、書評についてはいくつか運用方針があります。1つ目は「書評は1か月分をまとめて1つの記事にまとめても良い」ということです。3冊買って読んで、1つの記事にしてもよいということですね。

2つ目は、電子書籍の読み放題サービスの場合には、「読んだもののうち紹介すべきもの」かつ「読み放題金額に相当すると思われる冊数以上」の書評を公開するということです。「読み放題金額に相当すると思われる冊数以上」というのは、例えば月額1,000円のサービスだったら、700円の本1冊分の書評だけでは不十分で、もう1冊以上300円以上となるような本の書評も必要だということです。

3つ目は、「会社側判断で、書評等を修正・削除することがある」ということです。これは、現実には考えにくいことではありますが、書評の内容が公序良俗に反していたり、特定の人物や団体を傷つける明確な意図があったりする場合や、いわゆる「炎上」が予想されるような場合が該当します。

以上のようなハードルはありますが、書評を書いて公表し、申請書に領収書等を貼って我々総務部門に提出することで、翌月の給料と合わせて書籍購入補助手当が支給されます。

制度を導入する立場としては、たくさん本が買われ、書評が書かれ、多くの申請が行われることを期待しているところです。

<手当は賃金? 報酬? 給与?>

このようにして導入されることになった制度ですが、この制度を運用していくにあたっては、クリアにしておかなければならない点があります。

それは、この書籍購入補助手当という従業員に支払われるお金が、いろいろな法律の賃金や報酬、給与にあたるのかどうかです。

……という、専門的な話になるので、ここから先は、同じような制度の導入を検討している企業の管理部門の方に向けてのお話になります。

 

労働基準法の賃金になるのか。労働者災害補償保険法や雇用保険法の賃金になるのか。健康保険法や介護保険法、厚生年金保険法の報酬になるのか。所得税法の給与になるのか。

それぞれに該当するかどうかを事前に決定しておかなければなりません。

何が問題になるかというと、例えば仮に労働基準法上の賃金となると、割増賃金の算定の基礎となります。

当社ではフレックスタイム制を導入しているので、その月の所定労働時間を超えた際の超過勤務手当の算定の基礎となります。

現状だと下記の式で計算されます。

(基本給+ちかば手当) ÷ 1か月の平均所定労働時間数 × (1.00 + 割増賃金率) × 超過勤務時間

ちかば手当というのは、20,000円から1か月の定期代を控除した額を支給するいわば近距離居住手当です。会社の近くに住んでいるほど支払われる額が高くなる手当です。

それが、書籍購入補助手当が割増賃金の算定の基礎となる賃金だということになると、

(基本給+ちかば手当+書籍購入補助手当) ÷ 1か月の平均所定労働時間数 × (1.00 + 割増賃金率) × 超過勤務時間

という式になります。

当社は、例えば2018年の全社員の平均残業時間が上半期が1.6時間、下半期が2.5時間と短いこともあり、どちらの式であったとしても会社の負担にたいした違いはありません。ですが、この制度を何年も運用した後で、例えば労働基準監督署の監査で当社の解釈と異なる解釈がなされると、遡って計算し直さなくてはならなくなるかもしれません。それは非常に面倒な作業ですし、はっきりいって無駄な労力をかけることになります。

労働基準法以外では、労働者災害補償保険や雇用保険も、賃金に該当すれば、保険料が発生します。健康保険や厚生年金保険、介護保険でも、報酬に該当すれば、同様に保険料が徴収されることになります。

所得税法の給与所得に該当すれば、所得税の源泉徴収の対象となります。

これらも、数年間運用した後に「違う!」と指摘を受ければ、煩雑な計算をやり直さなくてはならない、という事態にならないとは限りません。

 

実は手当がこれらの賃金・報酬・給与に該当するかどうかについては、以前の制度でパスロジ社内で既に結論が出されていました。

まず、労働基準法の賃金に該当するかどうかについては、社内で検討が行われ、「書籍購入補助手当は、対象書籍を業務に必要な書籍に限っておらず、実費弁償的な意味合いがあり、また、高額な支給にならないよう上限を設けている、といった点から労働の対償性は薄いと判断」し、賃金には該当しないという結論に達し、それに基づき運用が行われていたのです。

労働基準監督署の監査に備える意味でも、しっかり検討したうえで結論を出しておく必要があるんですね。

当時この辺りの制度設計の中心となったのが総務の同僚のTさんなのですが、Tさんの仕事はいつも細やかで丁寧で、この件でもきちんとメモが残されていて、改めて感謝感謝です。

なお、今回の復活にあたっては、「書評を書く」という条件が会社側からの労働の指示に当たり、手当が「労働の対価」に該当するのではないかという懸念が社内で出されました。

これに対しては、そもそも手当の対象が自己啓発のための書籍なので読むのは基本的に労働時間外であるし、書評を書くのも労働時間外に行う行為なので、書評を書く行為は労働には当たらないと判断したことを補足しておきます。

<労働保険と社会保険>

次は、労働保険と社会保険です。

労働保険とは、労働者災害補償保険(労災保険)と雇用保険です。手当が賃金に該当すれば、両保険とも保険料が発生しますが、労災保険料は会社側の負担しかなく、雇用保険料は会社と労働者双方が負担します。

社会保険は、健康保険と厚生年金保険と介護保険です。すべて会社と労働者双方が負担しますが、手当が報酬に該当すれば保険料が発生します。

労働保険では「賃金」、社会保険では「報酬」という呼び方をし、本来的な意味合いは異なる部分もありますが、ここでは、保険料の徴収の対象となるかどうかが論点なので同様に扱います。

保険料が徴収されるとしたら、いわゆる「額面と手取り」の関係でいうと、書籍購入補助手当の「額面」(金額)から保険料の額を引いた額が従業員の手に渡る「手取り」になります。

これも、結論としては、書籍購入補助手当は賃金や報酬に含まれません。理由は、福利厚生の一環であり労働の対償性が薄いと判断できるからです。

<次は税金だが……>

次は、税金です。これについては、結論のみ「給与として課税対象となる」とだけ触れておきます。

先程の額面と手取りでいうと、各種保険料は徴収されないので、額面から所得税が引かれた額が手取りとして支給されるということになります。

実は私は社会保険労務士試験に合格している有資格者なのですが、そして、だからこそ労働基準法や各種保険についてはここまで書いてきたようなことを書けるのですが、税金についてはまったくの素人なので怖くて触れられない、というのが正直なところです。

それでもあえて少しだけ税金について触れさせていただきます。今回の復活にあたっての運用方針として、次のようなことを検討していました。

―― 業務で使用する書籍は、この手当の対象ではなく、別途会社経費で購入する。これについても書評の対象とする。経費で購入した書籍は会社の物品であるが、専用にしても良く、自宅へ持ち帰っても良い。購入から1年以上経過した場合は、会社は所有を放棄する。従業員は、これを私物としても良い。 ――

これは書籍購入補助手当とは全く別で、会社の経費で会社の消耗品として書籍を購入した場合についてなのですが、この運用をし、特定の従業員が専用して例えば1年後に私物とするとなると、「処分見込価格」で評価して給与として課税しなければならなくなる、つまり、古本としていくらで売れるかといったことを調査し、その価格に対する税金を源泉徴収しなければならなくなるかもしれないという意見が出されたため、最後の一文「従業員は、これを私物としても良い」を削除することとしました。

会社がゴミ箱に捨てたものを誰かが拾っても、それには課税できないだろうという判断です。

まぁ、これらの税金などの取扱いについては、総務の仕事なので我々にまかせていただき、従業員の方々には、この制度を活発に利用してくださることを願っています。

<最後に>

最後になりますが、この記事における書籍購入補助手当の法律上の扱いなどは、あくまでパスロジ社の見解を記載しているだけであり、法律上正しい扱いであることを保証しているわけではありません。また、当然に、この記事を読まれて同じような制度を導入した結果、何らかの不利益を被ったとしても、パスロジ社および私は一切責任を負いません。制度の導入にあたっては、税理士、社会保険労務士、関係行政機関等と相談のうえ、自己の判断と責任において行う必要があることをご承知おきください。

それでも、似たような制度を検討している方々にとって、今回の記事が一つの参考としてお役に立てれば幸いです。