というわけで、『フリクリ・プログレ』を見てまいりました。二部作のかたわれ『フリクリ・オルタナ』については、こちらの記事をお読みください。あと要約、ネタバレが出るので、嫌な人はそっとブラウザを閉じてください。

『フリクリ・プログレ』はどんな映画だったの?

 前回は予告編を見て「『フリクリ・プログレ』は毛色の違った作品になるんじゃないか」なんて想像をめぐらしたのですが。結果として、『フリクリ・プログレ』は『オルタナ』以上に『フリクリ』らしさを備えた作品でありました。

 『フリクリ・プログレ』の表の物語は、母子家庭に育った主人公。周囲から心を閉ざした少女は家業の喫茶店を手伝いながらも、鬱屈とした思いを貯めていた。そんな彼女に心を寄せるクラスメイトがアプローチを繰り返し、それに背中を押されるようにして自身の殻を壊していく。そういう王道的な作品です。

 表というなら裏の物語もあるわけで。前作『フリクリ』で海賊王の力を手に入れたハルコ。強大な力を手にした結果として二つの体に別たれた二人のハルコが想い人であるアトムスクに近づくために取る手段とは。つまり、前作『フリクリ』の文字通りの続編的なストーリーです。

 続編というのはストーリー的な側面だけでなく、「劇場版ながら連続短編的な構成になっている」「各話でロボとハルコのバトルが入る」「マンガコマを模したアニメーションなど実験的な演出を入れる」など全体的に『フリクリ』の再現が試みられています。

 「『フリクリ』といえばthe pillows」と言われるthe pillowsの楽曲も存分に使われています。冒頭からして新曲をぶっ放していくスタイル。その後もバトルなりアクションなり要所で前作の名曲を惜しげもなく使っていくわけで、怒涛の勢いはあります。

 一本のアニメ映画として見ますと、かなり正統派、王道なストーリーであって、見やすい作品ではあります。ただ、前作『フリクリ』の世界観を引き継いだ結果として、設定部分で初見者を置いてきぼりにしている感も強いかなとも思います。

結局2本の『フリクリ』はなんだったの?

 ネットでは賛否両論の様相であります。ようするに「前作に比べるとパワーダウンしてるよね」という意見と「前は前、今回は今回、これはこれでOK」っていう意見ですね。私個人としてはどっちの意見も分からなくもなくもない、という感じです。なんだかんだ、第3弾があったら見に行っちゃいますしね。

 こういう言い方するのもよろしくないのですが、オリジナルの『フリクリ』はGAINAXで実績を残していた重鎮と現代一線で活躍しているクリエイターが集った実験作品だったのです。私が邪推するに、庵野監督の元で研鑽を積んだ鶴巻さんが、今石さんや吉成さんのかっこいいアクションを見たくて。ストーリーや予算をでっちあげて、好き勝手にやった作品なんじゃないかと思うのです。「the pillowsのPV」と揶揄されることもありますが、まさにかっこいい動画のためだけに作られた、アニメのような何かなわけです。

 『フリクリ』のブランドネームの元に海外からも投資を引っ張ってきて、商業的な期待や制作する上での制約もつけられた今作とは事情が違うのですね。「前回の好き勝手を、できるだけ踏襲しなくちゃならない」運命を背負わされているわけで、ある程度不満が出てくるのもやむなしでしょう。大人の事情です。

 じゃあ、そんな作品は失敗なのか、と言いますと。賛否両論は成功のうちです。それだけ見に行ってくれた人が多いわけですから。それに今作のスタッフ陣を見ていると若い人も多くいまして、若手の育成には十二分に役立ったんじゃないかと思うのです。アニメ業界の片隅にいたこともある人間としてみると、うまくやれた作品だったんじゃないかと思えるのです。

 「伝説の作品」の続編は「普通の作品」だったわけですが、その「普通の作品」は「未来の伝説」の礎にはなるんじゃないかなという期待もあります。作品単体としても決して悪い作品ではないので、気になる方はぜひ劇場に見に行ってみてください。