今日はウォーキングについて書きたいと思います。
ウォーキングって書くと、かなりお年を召した方達の「歩け歩け会」のようなものをイメージするかもしれませんが、私が書くのは1日に50kmとか歩く、スポーツウォーキング=ロングウォークのことです。
このくらいの距離を歩いたことがある方は、実はそんなにいないのではないでしょうか。
歩くことは誰でもできるし、誰でも日々やっていることだし、スポーツだという感覚を持っていない方も多いことかと思いますが、実は相当ハードなスポーツです。

50kmというとフルマラソンの距離より少し多いくらいですが、ちなみにこの距離を、ランニングとウォーキングで走りきる(歩ききる)としたら、どちらが過酷だと思いますか?
多分ランニングのほうがキツイと思うでしょうね。「走る=息が切れる」というイメージがありますからね。

ちなみに50kmを行くのに、それぞれどれくらいの時間がかかるのか考えてみると、ランニングで50km走る場合、マラソンランナーだと2時間台、ランニングしている人でも4~5時間で走れればいいと思います。
それに対してウォーキングの場合は、時速5kmで計算して10時間かかることになります。

では先ほどの質問をこう言い変えたらどうですか?
4〜5時間運動を続けるのと、10時間運動を続けるのではどちらが過酷だと思いますか?

もちろん10時間でしょう、と全ての方が答えるはずです。10時間続ける、つまりウォーキングのほうです。
同じ距離を移動する場合、倍以上の時間運動を続けないといけないウォーキングのほうが過酷だと言えるのです。
もちろん運動の質は違うし、疲労に結びつく心拍上昇などの点は考慮していないので、所用時間だけとって比較することはあまり意味がありませんが、少なくともウォーキングは楽だろう、というイメージが正しくないかもしれない、という感じは少しは持ってくれるのでは、と思います。

特にトレーニングをしていない人でも、ウォーキングすることは誰にでもできます。普段歩いてない方でも、意を決しさえすれば5kmや10km、時間がかかることを厭わなければ誰でも歩けると思います。(だからウォーキングを運動としてイメージしづらいのですが)。

問題は20kmを過ぎたあたりからです。
20kmを過ぎた頃から脚や足のどこかに不調がでてきたり、マメができてきたりなど、体に何らかの異変がおきてきます。そしてそれをかばいながら歩いていると、今度はかばっていた別の部分が痛くなったりしてくる、というようにだんだんと調子がおかしくなってきたりします。
そして30kmでは、もうだめ、とリタイヤする人が出てきはじめます。ウォーキングに適したシューズでないともうこのくらいの距離でアウトになるケースも多いです。この距離を過ぎるとだんだんと普通に歩くのがキツイ状況になってきたりしますし・・・

あとは体を騙しだまししながらなんとか気力を振り絞って歩き続け、やっと50kmに到達した頃にはかなりボロボロの状況になっていることと思います。
もちろん天候や気温、地面の状況などによって、疲れ具合や体のダメージ具合も変わってくるので、一概には言えませんが、ランニングで50km走ったことがある人なら、50km歩いてみてどっちがキツイかはっきりと体感できると思います。

アメリカではスルーハイクと言って、数百キロから千キロオーバーのトレイルを長期間に渡って歩くスポーツ(世捨て人の旅、とも言われてますが・・・(^_^;))が密かな人気を博して行われていますが、日本ではアメリカのような長距離のいいトレイルがないことも大きな理由ですが、ウォーキングというスポーツはまだ定着していません。

その証拠にロングウォークを想定したウォーキング専用のウエアやシューズはなく、あってもランニング用や登山用などの流用、という感じになってしまい、専用と呼べるものもなければ、ウォーキングに関する書籍もありません。
(ビジネスマン用の革靴っぽいウォーキングシューズっていうのは意味が違うので)

スポーツ用品店にいって「1日50km歩きたいけど、いいシューズはありますか」と聞いて、ちゃんと答えてくれるスタッフはまずいません。なぜならば実際にそれだけ歩いたことがないから、どういうシューズがいいのか、全くわからないからです。多分、テキトーな事を言って、いいかげんなシューズを勧められてよし、でしょうね。

50km歩くには、ランニングシューズやスニーカーではまず厳しいです。無理だとはいいませんが、ダメージがかなり大きく辛いだけでしょう。
50km歩くにはしっかりとしたハードソールの、どちらかと言えばトレッキングシューズとか登山シューズに近いもののほうが向いているのですが、そこまでハードシェルでごっつくなくてもかまいません。ある程度通気性があるほうが蒸れなくていいですし。
おすすめのシューズは実はあまり多くありません。メーカーも限られるし、モデルも限られてきます。このへんは書くと長くなるので割愛しますが。

シューズと同じように大事なものとしてはインソール(中敷)とソックスの2つがあります。インソールはなくてもかまいませんが、シューズを足にフィットさせてくれるのに、大きな役割を果たしてくれるので、自分の足にあったインソールを計測してオーダーで製作してくれるところでゲットできればベストです。
そしてソックスは、手に入りやすいものではメリノウール素材のソックスが一押しです。モンベルなどのアウトドアブランド店で手に入ります。

足回りを固めたらそれだけで、かなりウォーキングが楽になってくるのです。(それでも50kmは決して楽ではないですが)
トレッキングポール(登山やトレッキング用の軽量杖)も歩く場所などによってはあったほうがいいですが、普通にアスファルトの路面を歩くならなくてもかまいません。

あとは「歩くぞ!」と、意を決するだけです。いきなり50kmじゃなく、できれば最初は5km程度から徐々に距離を伸ばしていくようにします。
そうすると「歩く」ということに体だけではなく「心が」慣れていきます。いままでだったらちょっと距離があるから歩くのは無理だな、と思える距離でも歩くのが苦じゃなくなってきます。

歩くのは速度がかなり遅いので、いつも車や自転車で通っている道でも、歩くと見える景色が全然違います。大通りを1本裏道に入れば、さらに新しい発見があったりして、都内でも結構楽しむことができるものです。
そうなったら50km歩くこともさほど難しくはありません。きっと「歩く」ことが好きになっているはずですし。

50kmもの距離を歩くことが果たして必要か、と言われれば、はっきり言って必要はない、と言えるでしょう。
しかし、そのくらいの距離を歩いた経験があれば、大震災などで交通機関がストップしても、20~30kmくらい歩いて帰ることも平気になるでしょうし、普段も数駅程度なら電車やタクシーを使わずに「歩けばいいじゃん」と考えれるようになります。

50kmとは言いませんが、時間があれば、歩けるシューズを履いて、ぜひ歩いてみることをおすすめします。
別に郊外の自然豊かのところに行って歩く必要はありません。スマホ片手に都内の裏路地を歩いていくのも、結構面白く歩けますし。

美味しいビールを飲むために、ということで・・

P.S.
50kmってどのくらいか、イメージしづらいかもしれませんので参考例を。
山手線一周を線路になるべく沿うように、裏道や抜け道をうまく使って歩くと大体45〜48km位の楽しいルートができます。(^_^;)